もうすぐ3.11から7年となります。
2/23に仙台市で開かれた『東北の未来をつくる新しい資金を知る会議』に参加してきました。
3.11の少し前から日本は人口減少と超高齢化、そしてこれらに関連して出てくる社会課題に対処する公的資金の圧倒的不足に直面しました。3.11とは関係なく進行していたこの状況に対して、日本各地で始まっている新しい「社会技術」の最前線を知り、3.11を経験した東北がどうしていくべきかを考える会議でした。
会議では、主に下記の5つのお金について、最新の動向が取り上げられました。
・社会的投資
・休眠預金
・遺贈寄付
・ふるさと納税
・新しい助成金
■「社会的投資」
これは日本ではまだ聞きなれない言葉ですが、経済的リターンだけを求めるこれまでの投資との違いは、社会の課題をどれだけ解決できるか(できたか)=社会的リターンも目的としている投資だということです。
まだまだ一般的な投資に比べて規模は小さいですが、世界的に急拡大しています。とくに、「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」と呼ばれる、官民が連携した社会課題への投資手法が注目されています。SIBはこれまでの補助金や委託事業のようにアウトプット(何をしたか)への支払いではなく、成果連動型で、アウトカム(出した成果や、社会課題の解決度合い)によって支払い額が変動する仕組みです。
SIBの考え方は、社会的な課題に対し、そのままの場合将来かかるであろう社会的コスト(投入される税金)を、予防的事業を行うことにより削減し、削減できたコストの一部をその事業の経費として支払うというものです。場合によっては、先に民間の資金提供者が事業実施のための資金を提供し、成果を確定してから公的資金で対価を支払うケースもあります。
<参考サイト>
(一財)社会的投資推進財団
http://www.siif.or.jp/
社会的インパクト評価イニシアチブ
http://www.impactmeasurement.jp/
■「休眠預金」
休眠預金は、これまで金融機関の収入になっていた10年間放置されている預金の一部を、社会課題解決のために活用しようとするものです。毎年1200億円程度発生し、預金者に払い戻しされる分を残して、700億円程度が活用できることになります。
活用の対象は「休眠預金等活用法」により、
①子ども及び若者の支援に係る活動
②日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動
③地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に係る活動
が決められています。
また、一部は前項の「社会的投資」の考え方で活用することも法律で明示されています。
<参考サイト>
内閣府:民間公益活動促進のための休眠預金活用http://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/index.html
■「遺贈寄付」
高齢化と年間死亡者数の増加により、遺贈寄付についても関心が高まっています。全国で相続により動く資産は2012年の統計で37兆円あまり。しかし福島県では資産流出率が25%以上で、相続を減ることで地域の資産が流出している状況にあります。また、相続人不在で国庫に帰属する資産も年々増えています。
以前は日本には寄付文化が無いと言われていましたが、災害支援等を通じて寄付への関心は高まっており、年齢が上がるほど実際に寄付をしたり、相続の一部を寄付してもいいという人は増えています。
<参考サイト>
遺贈寄付の窓口
https://izoukifu.jp/
■「ふるさと納税」
返礼品合戦が話題になったふるさと納税ですが、これにも「災害支援」「課題解決」という新たな動きがあります。災害支援ではふるさと納税の仕組みで被災地に寄付ができるようになっています。課題解決では、犬の殺処分対策費用や、公共的施設の建築費用をふるさと納税で集めるプロジェクトも生まれています。佐賀県では、NPOと協働で実施する社会課題解決への取り組みにふるさと納税の収入を交付する仕組みをつくり、2016年度には37団体へ2.26億円の実績が生まれています。
<参考サイト>
ふるさと納税(NPO等の支援)
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00331962/index.html
■「新しい助成金」
最後に、これまで補助金と同様に単発の事業のアウトプットに対しての助成が主流だった助成金にも新たな動きがあります。トヨタ財団では、調査や事業企画、実施地域での関係構築など、本格的な事業の前段階から助成を行うプログラムや、事業の担い手を育成するプログラムへの助成など、助成先の自立や長期的なインパクトを重視するようになっており、他の財団や民間の助成プログラムでも同様の流れが広まってきています。
<参考サイト>
(公財)トヨタ財団
https://www.toyotafound.or.jp/
日本でNPOの制度ができて20年、これまでNPOについては災害支援や福祉等の領域を行政の補助金や委託で行ったり、教育や文化、スポーツに関する活動を企業の助成金で実施するというイメージが一般には強かったかもしれません。また、NPOの存在自体が一般市民や企業とは縁遠いものと思われていた気がします。
社会課題が複雑で膨大になるなか、これからは市民も企業も行政もNPOもさまざまな資金を活用して参加や連携をしながら新たな仕事や組織をつくっていく時代になったと感じています。
そして今回紹介したお金は、社会の中で循環していくにはどれも「透明性」や「結果の評価」がこれまでよりも重要になります。それを担保する組織や人材づくりも今後の大きなテーマです。この会議を主催した「地域創造基金さなぶり」はまさに東北でそれらを推進している団体ですが、福島でも県域で同様の役割を果たす「ふくしま百年基金」の設立準備が進んでいます。現在設立発起人を募集していますので、多くの方々のご協力をお待ちしています。
文責 岩崎大樹