「伝統と新しい相馬焼」大堀相馬焼 陶徳窯(すえとくがま)陶(すえ)さん

 

皆さまこんにちは!松本です。

今回の利用者インタビューは郡山市で作陶されている、大堀相馬焼 陶徳窯(すえとくがま)の陶正徳(すえまさのり)さんにお話をお聞きしました。
もともと陶徳窯は浪江で作陶されていたのですが、震災による原発事故で帰還困難区域になってしまわれました。
震災後、郡山で再び作陶することを決め、現在郡山の工房でショップ、体験教室などと並行して行っておられます。
インタビューは工房の2階にあるショップでさせていただいたのですが、ご自身が作られた陶器を手に取り丁寧に説明してくださいました。
今回は大堀相馬焼についてや、大堀相馬焼をより発展させていくための活動などをお聞きしました!

それではご覧ください。

Q.大堀相馬焼のはじまりはどのようなものだったのですか?

A. 元々浪江の地域で原料となる粘土が取れたことから焼き物が始まりました。
相馬駒焼と大堀相馬焼の二つが現存しているのですが、これは地域によって分けられたんですよ。
相馬地区で作っていたのが相馬駒焼、大堀地区で作っていたのが大堀相馬焼です。

Q.大堀相馬焼は浮き上がったヒビが特徴的なんですよね。

ヒビが入るのは大堀相馬焼に限ったことではないんですが、これは焼いてすぐこのような色が出るのではなく粘土と釉薬(ゆうやく)の収縮率の差を利用しているんです。
粘土の収縮率と釉薬の収縮率が違うため、釉薬の方がより縮んでヒビが入ります。これを一般には「貫入(かんにゅう)」といいます。
相馬焼に使われている粘土と釉薬は、綺麗にヒビが入る収縮率の差だったようです。

焼きあがって墨汁を塗りふき取るとヒビが入っているところだけに墨が入り込み、よりヒビが際立つのですが、これを大堀相馬焼では「青ひび」と呼んでいます。
墨を塗って完成して、1か月くらいしたものからピンッとヒビが入る音がする時もあるんですよ。
完成してから入ったヒビは墨が入っておらず目立たないので、機会があれば探してみてください。
青ひびについて説明している陶さん

Q.他にも大堀相馬焼ならではの特徴について教えてください。

A. そうですね。大堀相馬焼というと、「二重焼」が浮かぶ方もいるのではないでしょうか。保温性が高く、タンブラーでも同じような構造のものがありますね。
これは外側と内側、2つの形を作ってそれぞれ仕上げて作るんです。そして仕上がった2つをくっつけてまた仕上げるので、普通のマグカップを作るより手間がかかるんですよね。
二重焼によくみられるハートの形は、もともとは千鳥が海で遊んでいる様子をイメージして作られました。

実は戦後アメリカへ輸出したこともあって、「アイディアカップ」「ダブルカップ」という名称で親しまれていた背景もあるんですよ。
その際、アメリカではハートの形だと喜ばれたそうです。

普通は別の窯で同じものをつくることはないのですが、この輸出の際にいろんな窯元から集めて数をそろえて「相馬焼」として送っていたので、
定番のものはどの窯でも作られています。

Q.拝見した中に色が混ざったものがありましたが、色味が変わることもあるのですね。

A. 同じ釜、同じ原料、同じうわぐすりを使っていても、温度の具合によっては色が変わることもあります。
なので、例えば色違いのマグカップを2つ欲しいと言われてもすぐには用意できないし、緑の中に灰色が混ざる珍しい配色のものをもう一度作ろうとしても作れない。
職人としてはひとつの食器に違う色が混ざるより、同じ色で統一したいところですけどね。

Q.陶徳窯での相馬焼について教えてください。

A. 郡山の工房では、現在ガス窯と電気窯の2つを利用しています。
元々の工房は帰還困難区域になってしまったため、そこで採れる粘土は使えないんです。
今はインターネットが充実して様々な粘土を取り寄せられるので、その中から選んだものを調合して、オリジナルの粘土を作っています。
釉薬も同じように組み合わせて作っているため、本来の粘土のようにヒビを入れたり緑の色を出したりするのが課題ですね。

今まで伝統的なものを父親が作っていたんですが、震災を受けて郡山で窯を再開するにあたって自分で作るようになりました。
他にも、自分のオリジナルの作品としてコーヒーサーバーやランプシェード、ピンクや水色の色味が明るい二重焼などを作っています。
今後は伝統的なもの以外にもオリジナルの陶器を作っていこうと思っているのですが「青ヒビ」「走り駒」のような特徴がないと
大堀相馬焼とは言えないという意見と、新しいものを作って伝えていってもいいんじゃないかという意見のどちらもあるので、意見の相互尊重が大事になりますね。

焼く前の窯の様子
オリジナル陶器

Q.陶芸教室ではどのようなものが作れるのでしょうか

A. 形はご自身が作りたいものを好きなように作れますよ。
カップや茶わんなどの基本的なものから、例えばこの大きさのお皿が作りたいなどのご希望があればお教えできます。
手びねり体験、ロクロ体験、チケットコースの3つがあるのですが、最初の2つはお試し用のコースでどちらか1回のみとさせていいただいています。
次回からはチケットコースのみで、お好きな時間帯に2時間予約していただいて時間内で何回でも作り直しができます。チケットコースで焼く際は100g300円の別途料金がかかります。出張陶芸教室も行っているので、ぜひお呼びください。

ロクロに乗せる前の粘土
ロクロ体験

Q.今力を入れていることは何ですか?

A.去年、南部鉄器を作っている方とお話をする機会があり、南部鉄器とのコラボ商品を開発中なんです。
試作を重ねて、南部鉄器の急須に大堀相馬焼の蓋をつけたものなんかも作ってみました。
普通、急須などの部品ごとに分かれるものは焼いたときに一緒に縮むように合わせながら作るんですが、今回はもともとある形に合うように作らなけらばいけなかったのでなかなか難しい作品でした。
他にも日常的に使える商品の開発を考えていて、少しでも南部鉄器と大堀相馬焼の宣伝になればうれしいですね。

Q.これからやっていきたいことはありますか?

A. 陶芸教室は行っているんですが、宣伝はあまりしていなかったのでこれからしていきたいです。
ショップにしている2階のスペースも広さがあるので、そこでワークショップもしたいですね。
酒屋さんと共同でワークショップを行い自分でオリジナルのお猪口をつくり、それでお酒を飲むのもいいなあなんて考えてます。

初めての粘土の感触にドキドキしながらロクロを回していたのですが、陶さんが手を貸してくださったのできれいな形に仕上がりました。
自分が作った作品がきれいな陶器になって手元に来た時の満足感がすごいですよ!
2階のショップも見せていただいたのですが、一般的な陶器のマグカップやお皿だけでなく箸置きやランプシェードなどオリジナリティあふれる作品が並んでいました。
陶芸体験はもちろん、ショップで購入することも可能ですので、ぜひ訪れてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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